過敏性腸症候群とは
過敏性腸症候群とは、通常の検査では腸に異常などが認められないにも関わらず、慢性的に腹部の膨張感や腹痛を訴えたり、下痢や便秘などの便通の異常を感じる症候群です。腸の内臓神経が何らかの原因で過敏になっていることにより、引き起こされると考えられています。
日本では、過敏性腸症候群は有病率の高い疾患で6.1%~14.2%の方が過敏性腸症候群を発症していると言われており有病率は増加傾向です。
過敏性腸症候群は直接命に関わる病気ではありませんが、慢性的な腹痛や下痢、便秘はQOL(生活の質)を大きく低下させてしまいます。
過敏性腸症候群の原因
過敏性腸症候群の発症原因はまだ詳しくは明らかになっていませんが、近年の研究では腸管の感染症が引き金となり、腸管粘膜の透過性の亢進(リーキーガット)や腸内フローラの変化が起こり過敏性腸症候群の症状を引き起こすと考えられています。
腸管は脳と密接な連絡を取り合っており(脳腸相関といいます)脳がストレスを感じると腸の収縮運動が強くなったり、ある種の食べ物(グルテンやカゼインなど)が腸の炎症を引き起こすことで下痢や便秘といった症状が起こります。
過敏性腸症候群の診断
過敏性症候群の診断基準RomeⅣ
「6カ月以上前から症状があり、直近の3カ月間は月に4日以上腹痛が繰り返される」状態であり、
かつ直近の3カ月において以下の項目の2つ以上に該当する場合に、過敏性腸症候群と診断されます。
- 排便と症状が関連している
- 排便頻度の変化が見られる
- 便性状の変化を伴っている
また過敏性腸症候群の診断で必要なことは内視鏡検査や血液、その他の画像検査等で異常がないという点です。
種類 | 便の状態 |
---|---|
便秘型IBS(IBS-C) | 硬便・兎糞状便(小さなコロコロした便)の割合が25%以上、軟便・水様便の割合が25%未満 |
下痢型IBS(IBS-D) | 軟便・水様便の割合が25%以上、硬便・兎糞状便の割合25%未満 |
混合型IBS(IBS-M) | 硬便・兎糞状便、軟便・水様便の割合がいずれも25%以上 |
分類不能型IBS | IBS-C・D・Mのいずれにも当てはまらない |
過敏性腸症候群の治療法
生活習慣
ストレスを避けること、過労や不眠を減らすよう生活習慣の見直しが必要です。
食事療法
腸内細菌叢を悪化させる食事を減らす。
腸内環境を悪化させる食材として
- 砂糖の多い食事
- 加工食品
- グルテン、カゼイン
また一般的に腸内環境に良いと言われている食物繊維ですが、下痢型IBSでは症状を悪化させることも多いことが分かっています。
低FODMAP食
IBSやSIBOの治療として最近注目されているのが低FODMAP食です。
F Fermentable Sugars 発酵性の糖質
O Oligosaccharides オリゴ糖(フルクタン、ガラクトオリゴ糖)
D Disaccharides 二糖類(ラクトース)
M Monosaccharaides 単糖類(フルクトース)
a and
P Polyol sweeteners ポリオール類(ソルビトール、マンニトール、イソマルト、キリシトール、グリセロール)
FODMAPとはこれらの頭文字をとったもので腸内で発酵されガスになりやすいものです。これらの食事をできるだけ減らした「低FODMAP食」は症状の改善に役立ちます。
例
オリゴ糖
納豆、きな粉、ごぼう、玉ねぎ、えんどう豆、にんにく、豆腐、小麦など
二糖類
牛乳、ヨーグルト、アイスクリームなど
単糖類
はちみつ、果物など
ポリオール
シュガーレス菓子、プルーン、イチジク、マッシュルームなど
薬物療法(保険診療範囲内の薬剤)
IBS 治療で用いられる薬剤です
- ポリフル・コロネル(高分子重合体)
- セレキノン
- イリボー(セロトニン受容体(5-HT3受容体)拮抗薬)
- トランコロン
- ロペミン
- ガスモチン(セロトニン受容体(5-HT3受容体)拮抗薬)
- 酸化マグネシウム・モビコール(下剤)
- リンゼス・アミティーザ・グーフィス(粘膜上皮機能変容薬)
この他漢方薬なども用いられます。