リーキーガット症候群(腸漏れ症候群)

リーキーガット症候群とは

腸(小腸)には

  • 体に必要なものを吸収する。
  • 体に不要なもの、毒性のあるものは吸収しない。

という2つの働きがあります

腸は異物を血液中に侵入させないために隣あった細胞同士がホチキスのようなタンパク質でしっかり密着しいています。この密着結合はタイトジャンクションと呼ばれています。
タイトジャンクションが緩むことで細胞と細胞の隙間が開き、異物が血液中に侵入してしまいます。

このように腸の粘膜に隙間ができて異物が侵入しやすい状態を俗にリーキーガットと呼ばれています。(正式には腸管粘膜の透過性の亢進といいます)

リーキーガットが引き起こすさまざまな異常

異物が侵入すると異物を排除しようと免疫細胞がやってきます。異物を排除するために免疫細胞が戦うことで炎症が起こります。その時に産生される炎症性サイトカインは血液の流れに乗って全身に広がります。
本来関係のない臓器や細胞が炎症性サイトカインの「流れ弾」に当たってしまいます。
また、血液中に侵入し免疫を逃れた細菌や異物は他の場所で炎症を引き起こします。
炎症の影響を受けやすいのは血管の内側(血管内皮といいます)、肝臓皮膚気道や肺の粘膜などです。

これらの部位に炎症が起こると

  • 血管内皮に炎症➡︎動脈硬化
  • 皮膚に炎症➡︎アトピー性皮膚炎
  • 気道粘膜に炎症➡︎喘息
  • 脳に炎症➡︎うつ、気分障害認知症子供なら発達障害
  • 肝臓に炎症➡︎脂肪肝

リーキーガットはこのようにさまざまな疾患を引き起こす原因となっています。

リーキーガットの原因

腸管バリアの破綻

異物を腸に入れないバリア機能には3つあります。

  • 第1のバリア:腸内細菌叢(腸内フローラ)
  • 第2のバリア:粘膜から分泌される免疫物質(IgA)
  • 第3のバリア:タイトジャンクション

リーキーガットはこの3つのバリア機能が壊れることによって発症します。

なぜバリアが壊れるのか?

  • 腸内フローラの異常をディスバイオーシスと呼びます。ディスバイオーシスは食事(砂糖や化学調味料、カフェイン、アルコールなどの嗜好品、保存料などの食品添加物)やストレス、抗生物質などで引き起こされます。
  • 腸の粘液には物理的に悪性細菌や異物が粘膜に近づかないようにする働があります。また粘液内に分泌されるIgAとう免疫物質が悪性細菌やウイルスを防ぐ働きをしています。粘液の減少は栄養不足(おもにタンパク、ビタミン、ミネラル不足)やある種の食品添加物によって起こります。IgAの分泌にはビタミンA不足が関わっています。
  • 2つのバリアが壊れると悪性細菌や異物によってタイトジャンクションを緩んでしまい、異物が血管内へ侵入してしまいます。また、小麦のグルテンや牛乳のカゼインにはタイトジャンクションを緩めてしまう作用があります。

副腎疲労

リーキーガットの背景に副腎疲労が存在することが多く見られます。
副腎から作られるコルチゾールは免疫を調節したり炎症を消す働きがありますが低血糖、ストレス、慢性炎症などによりコルチゾールが枯渇すると腸の炎症が抑えられずディスバイオーシスが起こります。腸に炎症が起こるとさらにコルチゾールが使われるという悪循環に陥ることになります。

腸にいいことを続けていてもなかなか良くならない場合、副腎疲労の評価をお勧めしています。

よくならない不調にはリーキーガットが潜んでいる

慢性の疲労、気分の落ち込み、不眠、イライラ、月経不順、原因不明の体の痛み、アレルギー、膠原病、こどもの発達障害など今の医学でもなかなか解決しない不調で悩んでいる方はたくさんいます。
それぞれ対症療法として抗うつ剤や安定剤、ホルモン剤や鎮痛薬などを長期に服用していますが改善しない場合も多く認められます。

これらの不調の背景にリーキーガットが潜んでいるかもしれません。

リーキーガットの診断方法

リーキーガットという概念は日本ではまだ一般的ではありませんし診断治療のガイドラインも存在しません。当院では以下の2つの検査を行っています。

リーキーガットの検査

腸管バリアパネル

リーキーガット重要な3つのマーカー(カンジダ、ゾヌリン、オクルディン)に対する抗体を測定します。

遅延型フードアレルギー検査

リーキーガットがあると多数の食物が血液中に侵入します。この検査は避けるべき食物を知ることと、どれくらいリーキーガットになっているのかという重症度を知ることができる検査です。

リーキーガットの治療

  1. 原因の除去
    リーキーガットの原因となるバリア機能を破壊する生活習慣の改善。
    食事:砂糖、グルテン、カゼイン、アルコール、カフェインといった食材を減らすこと
    運動:適度な運動は腸内フローラを改善
    睡眠:日中消化吸収のため働きづめの腸を休めるためにはしっかりと睡眠をとる必要があります
  2. 腸管バリア機能の改善
    1:腸内フローラの改善
    良性細菌の摂取
    2:粘膜の修復
    粘膜の修復に必要な栄養素は
    蛋白質、ビタミンB、ビタミンA、ビタミンD、亜鉛などが必要です
    3:タイトジャンクションの修復
    上記粘膜の修復に準じます。タイトジャンクションを広げてしまうグルテン、カゼインをできるだけ食べないことも治療のひとつです  
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