胃腸内科である当院ではお腹の問題を抱えた方が多く来院されます。
診察で腸内環境が悪いですねとお伝えするも、うまく伝わっていない事を多く経験します。
短い診察時間の間に説明しきれない事を今回はお伝えしようと思います。
腸内環境とは?
腸内環境とは、腸内に存在する微生物の種類や数、そしてそのバランスのことを指します。
腸内には約100兆個もの微生物が生息しており、これらは腸内フローラ(腸内細菌叢)と呼ばれます。
腸内フローラには、主に三つのグループが存在します:善玉菌、悪玉菌、そして日和見菌です。
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善玉菌
体に良い影響を与える菌で、ビフィズス菌や乳酸菌が代表的です。これらは腸内の酸性度を高め、悪玉菌の増殖を抑える役割を持ちます。
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悪玉菌
体に有害な物質を生成する菌で、ウェルシュ菌や大腸菌の一部がこれに該当します。これらが増えすぎると、腸内で有害なガスや毒素が発生し、健康に悪影響を与えることがあります。
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日和見菌
通常は悪影響を与えませんが、善玉菌や悪玉菌のバランスが崩れると、その影響を受けて善玉にも悪玉にも変わる可能性がある菌です。
腸内環境悪化がもたらす影響
腸内環境が悪化する主な原因は、食生活の乱れ、ストレス、運動不足、そして加齢などが挙げられます。これらの要因が腸内フローラのバランスを崩し、次のような健康問題を引き起こす可能性があります。
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消化不良や便秘・下痢
食生活が偏り、食物繊維や発酵食品の摂取が不足すると、善玉菌が減少し、悪玉菌が増殖します。これにより、消化不良や便秘、下痢といった消化器系のトラブルが生じやすくなります。
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免疫機能の低下
腸は免疫機能の70%以上を担っているとされています。腸内環境が悪化すると、腸のバリア機能が弱まり、病原菌やウイルスが体内に侵入しやすくなります。これにより、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなります。また免疫がバランスを崩すことで各種アレルギー疾患にもかかりやすくなります。 -
メンタルヘルスへの影響
腸は「第二の脳」とも呼ばれるほど、脳と深い関係があります(腸脳相関)。腸内環境が悪化すると、セロトニンやドーパミンといった神経伝達物質の生成が妨げられ、ストレス耐性が低下したり、うつ症状が現れることがあります。 -
皮膚への影響
腸は脳と同様に皮膚とも深い関係にあります(腸皮膚相関)。腸内環境が悪化して粘膜のバリアが壊れると体内に異物が侵入してきます。腸の炎症は皮膚の炎症を引き起こしアトピー性皮膚炎や乾癬などの疾患を引き起こします。
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生活習慣病のリスク増加
腸内細菌はエネルギー代謝や脂肪蓄積に関与しており、腸内環境の悪化は肥満、高血圧や糖尿病などの生活習慣病のリスクを高めることがあります。また腸は炎症を起こしやすい場であり炎症は認知症やがんの原因になることも示唆されています。
腸内環境は、私たちの全身の健康と密接に関わっています。食生活や生活習慣を見直し、腸内フローラを整えることは、免疫力の向上やメンタルヘルスの改善、さらには生活習慣病の予防に繋がります。
また他の疾患の治療にも腸ケアは欠かせないことがお分かりいただけたと思います。